Bああたしか、あれはテレーズの人形が歩いているんだ……」
なるほど、検事の云うとおり、熊城が踏む重い靴音に交って、リリンリリンと幽かに顫えるような音が伝わってくる。無生物である人形の歩み――まさに、魂の底までも凍《い》てつけるような驚愕《おどろき》だった。しかし、当然そうなると、人形の側《かたわら》にある何者かを想像しなくてはならない。そこで三人は、かつて覚えたことのない昂奮の絶頂にせり上げられてしまった。もはや躊躇《ちゅうちょ》する時機ではない――熊城が狂暴な風を起して、把手《ノッブ》を引きちぎらんばかりに引いた時、その時なんと思ってか、法水が突如けたたましい爆笑を上げた。
「ハハハハ支倉君、実は君の云う海王星が、この壁の中にあるのだよ。だって、あの星は最初から既知数ではなかったのだからね。憶い出し給え、古代時計室にあった人形時計の扉《ドア》に、いったい何という細刻が記されていたか。四百年の昔に、千々石《ちぢわ》清左衛門がフィリップ二世から拝領したという梯状琴《クラヴィ・チェンバロ》は、その後所在を誰一人知る者がなかったのだよ。たぶんあの音は、截《た》たれた絃《いと》が、震動で顫《
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