黷ト、それまで落ちかかっていた四つの飛沫が、再びその形のままで上昇してゆくだろう。すると、当然最後の飛沫との間に対流の関係が起らねばならない。それが、あの微動もしない空気の中で、五回目の飛沫をふわふわ動かしていったのだ。つまり、その1から4までのものと云うのは、最後に上った濛気《もうき》をある一点に送り込む――詳しく云えば、それに一つの方向を決定するために必要だったのだよ」
「なるほど、それが虹を発生させた濛気か」検事は爪を噛みながら頷《うなず》いた。「いかにもその一事で、伸子の不在証明《アリバイ》が裏書されるだろう。あの女は、異様な気体が窓の中へ入り込んでゆくのを見た――と云ったからね」
「ところが支倉君、その場所というのは、窓が開いている部分ではないのだよ。あの当時|棧《さん》を水平にしたままで、鎧扉《よろいど》が半開きになっていたのを知ってるだろう。つまり、噴泉の濛気は、その棧の隙間から入り込んでいったのだ」と法水は几帳面《きちょうめん》に云い直したが、続いて彼は、その虹に禍いされた唯一の人物を指摘した。「それでないと、ああいう強彩な色彩の虹が、けっして現われっこないのだからね。
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