「られるのですか[#「算哲博士の心臓のことを考えていられるのですか」に傍点]、あの大魔霊《デモーネン・ガイスト》を……ハートの王様《キング》とは。ハハハハ久我さん、僕はラファテールじゃありませんがね。人間の内観を、外貌によって知る術《すべ》を心得ているのですよ」
 算哲の心臓――それには、鎮子ばかりでなく検事も熊城も、瞬間化石したように硬くなってしまった。それは明らかに、心の支柱を根柢から揺り動かしはじめた、恐らくこの事件最大の戦慄《せんりつ》であったろう。しかし鎮子は、作り付けたような嘲りの色を泛《うか》べて云った。
「そうすると、貴方はあの瑞西《スイス》の牧師と同様に、人間と動物の顔を比較しようとなさるのですか」
 法水は徐《おもむ》ろに莨《たばこ》に点火してから、彼の微妙な神経を明らかにした。すると、それまでは百花千弁の形で分散していた不合理の数々が、みるみる間にその一点へ吸い着けられてしまったのである。
「あるいはそれが、過敏神経の所産にすぎないかもしれませんが、しかしともあれ貴女は、算哲博士のことをハートの王様《キング》と云われましたね。無論それからは、異様に触れてくる空気を
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