S身が崩れはじめたように戦《おのの》きだした。そしてしばらく切れぎれに音高い呼吸を立てていたが、「ああ怖ろしい方……」とからくも幽かな叫び声をたてた。が、続いてこの不思議な老婦人は、たまりかねたように犯人の範囲を明示したのであった。「もう、この事件は終ったも同様です。つまり、その負数の円のことですわ。動機をしっくりと包んでいるその五芒星円《ペンタグラムマ》には、いかなるメフィストといえども潜り込む空隙《すき》はございません。ですから、いま申し上げた荒野《あれの》の意味がお判りになれば、これ以上何も申し上げることはないのでございます」と不意《いきなり》立ち上がろうとするのを、法水は慌てて押し止めて、
「ところが久我さん、その荒野と云うのは、なるほど独逸神学《テオロギヤ・ゲルマニカ》の光だったでしょう。ですが、その運命論《フェータリズム》は、かつてタウラーやゾイゼが陥ち込んだ偽《にせ》の光なのです。僕は、貴女が云われた精神萌芽説《プシアーデ》の中に、一つの驚くべき臨床的な描写があるのを、まるで、聴いてさえ狂い出しそうな、異様なものを発見したのでした。貴女は何故、算哲博士の心臓のことを考えて
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