ゥ出し得ざるは、その姿が[#「吾等が悪魔を見出し得ざるは、その姿が」に傍点]、全然吾等が肖像の中に求め得ざればなり[#「全然吾等が肖像の中に求め得ざればなり」に傍点]――と、勿論、この事件最奥の神秘は、そういう超本質的《ユーベルウエゼントリッヒ》な――形容にも内容にも言語を絶している、あの哲学径《フィロゾフェン・ウエーヒ》の中にあるのです。法水さん、それは地獄の円柱を震い動かすほどの、酷烈な刑罰なのでございますわ」
「ようく判りました。何故なら、その哲学径《フィロゾフェン・ウエーヒ》の突き当りには、すでに僕が気づいている、一つの疑問があるからです」と法水は眉を上げ昂然と云い返した。「ねえ久我さん、聖《サン》ステファノ条約でさえも、猶太人の待遇には、その末節の一部を緩和したにすぎなかったのです。それなのに何故《どうして》、迫害の最もはなはだしいカウカサスで、半村区以上の土地領有が許されていたのでしょう。つまり、問題と云うのは、その得体の知れない負数にあるのですよ。しかし、その区地主《くじぬし》の娘であると云うこの事件の猶太人《ジュウ》は、ついに犯人ではありませんでした」
 その時、鎮子の
前へ 次へ
全700ページ中450ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング