ヘレヴェズが登場して、それから、この事件は、急降的に破局《キャタストロフ》へ急ぐことだろうよ」
「解決――莫迦《ばか》を云い給え。僕はもう、辞表を出す気力さえなくなっているんだぜ。たぶん最初から、ト書に指定してあるんだろう。第二幕までは地上の場面で、三幕以後は神筮降霊《しんぜいこうれい》の世界だ――とでも」と熊城は銷沈《しょうちん》したように呟くのだった。「とにかく、後の仕事は、君が珍蔵する十六世紀前紀本《インキュナプラ》でも漁《あさ》ることだ。そして、僕等の墓碑文を作ることなんだよ」
「うん、その十六世紀前紀本《インキュナプラ》なんだがねえ。実は、それに似た空論が一つあるのだよ」と検事は沈痛な態度を失わず、詰《なじ》るような険《けわ》しさで法水を見て、「ねえ法水君、虹の下を枯草を積んだ馬車が通った。――そして、木靴を履いた娘が踊ったのだ、――すると、この事件には一人の人間もいなくなってしまったのだよ。僕にはどうしても、この牧歌的風景の意味が判らないのだ。だいたいその虹――と云うのは、いったいどういう現象の強喩法《カタクレエズ》なんだね」
「冗談じゃない。けっしてそれは文典でも――詩で
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