ナ貴方の御同情をうけていられるか、怪しくなってまいりますわ。サア、次の訊問を始めて頂だい」
「いや、もうお引き取りになっても。まだ、ダンネベルグ事件について、参考までにお訊きしたい事はあるのですが」と法水はそう云って、いつまでも狂喜の昂奮から、去ることの出来ない伸子を引き取らせた。長い沈黙と尖った黒い影――彼女が去った後の室内は、ちょうど颱風一過後の観であったがそこにはなんとも云えぬ悲痛な空気が漲《みなぎ》っていた。何故なら、彼等は伸子の解放を転機として、もはや人間の世界には希望を絶たれてしまったからだ。あの物凄じい黒死館の底流――些細な犯罪現象の個々一つ一つにさえ、影を絶たないあの大魔力に、事件の動向は遮二無二《しゃにむに》傾注されてゆくのではないか。熊城は顔面を怒張させて、しばらくキリキリ歯噛みをしていたが、突然法水が引き抜いた|差込み《プラグ》を床に叩きつけた。そして、立ち上って荒々しく室内を歩き廻っていたが、それに、法水は平然と声を投げた。
「ねえ熊城君、これでいよいよ、第二幕が終ったのだよ。もちろん、文字どおりの迷宮混乱紛糾さ。だがしかしだ、たぶん次の幕の冒頭《しょっぱな》に
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