ゥ据えていたが、その時法水の眼に怪しい光が現われて、腕を組んだままズシンと卓上に置いた。そして、いかにも彼らしい奇問を放った。
「ああ、算哲……。あの凶兆の鋤《すき》――スペードの王様《キング》をですか」
「いいえ、算哲様なら、ハートの王様《キング》でございますわ」と伸子は反射的にそう云った後で、一つ大きな溜息をした。
「なるほど、ハートなら、愛撫と信頼でしょうが」と瞬間法水の眼が過敏そうに瞬《またた》いたが、「ところで、その告げ口をするという蝙蝠《こうもり》ですが、いったいそれは、どっちの端にいたのですか」
「それが、鍵盤《キイ》の中央から見ますと、ちょうどその真上でございましたわ」と伸子は躊《ため》らわずに、自制のある調子で答えた。
「しかし、その側《かたわら》には、好物の蛾がいたのです。けれどもその蛾が、あくまで沈黙を守っている限りは、よもや残忍な蝙蝠だって、むだに傷つけようとはいたすまいと思いますわ。ところが、その寓喩《アレゴリー》は、実際とは反対なのでございました」
「いや、そういう童話めいた夢ならば、改めてゆっくりと見てもらうことにしよう――今度は監房の中でだ」と熊城が毒々
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