bと智的なものが閃《ひらめ》いたかと思うと、伸子は高い顫《ふる》えを帯びた声で云った。「ああ、あの方[#「あの方」に傍点]に御用がおありなのでしょうか。それでしたら、鍵盤《キイ》のある刳《く》り込みの天井には、冬眠している蝙蝠《こうもり》がぶら下っておりました。また、大きな白い蛾が、まだ一、二匹生き残っていたのも知っておりますわ。ですから、冬眠動物の応光性《トロピズム》さえ御承知でいらっしゃいますのなら……。そうして光さえお向けになれば、あの動物どもはその方へ顔を向けて、何もかも喋《しゃべ》ってくれるでしょうからね。それとも、この事件の公式どおりに、それが算哲様だった――とでも申し上げましょうか」
伸子は、毅然《きぜん》たる決意を明らかにした。彼女は自身の運命を犠牲にしてまでも、或る一事に緘黙《かんもく》を守ろうとするらしい。
しかし、云い終ると何故であろうか、まるで恐ろしい言葉でも待ち設けているように、堅くなってしまった。恐らく、彼女自身でさえも、嘲侮の限りを尽している自分の言葉には、思わず耳を覆いたいような衝動に駆られたことであろう。熊城は唇をグイと噛み締めて、憎々しげに相手を
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