cな事には、この時もまた、伸子の動静だけが不明で、誰一人として、彼女の姿を目撃した者がないのだった。以上の調査を私服から聴き終ると、法水はひどく複雑な表情を泛《うか》べ、実にこの日三度目の奇説を吐いた。
「ねえ支倉君、僕にはレヴェズの壮烈な姿が、絶えず執拗《しつ》っこくつき纏《まと》っているのだがね。あの男の心理は、実に錯雑をきわめているのだ。あるいは誰かを庇《かば》おうとしての騎士的精神かもしれないし、またああいう深刻な精神葛藤が、すでにもう、あの男に狂人の境界を跨《また》がせているのかも判らない。だが、なにより濃厚なのは、あの男が死体運搬車に乗っている姿なんだよ」となんら変哲もないレヴェズの言動に異様な解釈を述べ、それから噴泉の群像に眼がゆくと、彼は慌《あわ》てて出しかけた莨《たばこ》を引っ込めた。「では、これから驚駭噴泉《ウォーター・サープライズ》を調べることにしよう。恐らく犯人であると云う意味でなしに、今日の事件の主役は、きっとレヴェズに違いないのだ」
その驚駭噴泉《ウォーター・サープライズ》の頂上は、黄銅製のパルナス群像になっていて、水盤の四方に踏み石があり、それに足をかけ
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