フ把手《ハンドル》を横倒しにするという装置で、火砲初期頃の巻上式に比べると、きわめて幼稚な十三世紀あたりのものに相違なかった。すなわち、この一つの火術弩から発射された鬼箭が、クリヴォフ夫人に生死の大|曲芸《サーカス》を演ぜしめたのであった。が、それが掲げられていた壁面の位置は、ちょうど法水の乳下辺に当っていた。またそれと同時に、熊城が石卓の上にあった鬼箭を持って来たけれども、その矢柄は二センチに余り、鏃《やじり》は青銅製の四叉になっていて、鴻《こうのとり》の羽毛で作った矢筈《やはず》と云い、見るからに強靱兇暴をきわめ、クリヴォフ夫人を懸垂しながら突進するだけの強力は、それに十分窺われるのだった。のみならず、弩《ど》にも箭《や》にも、指紋はおろか指頭を触れた形跡さえなかったのであるが、その上、疑問はまず熊城の口から発せられて、自然発射説は最初から片影もなかったのである。何故なら、事件発生の直前には、その火術弩は箭を番《つが》えたまま、窓の方へ鏃を向けて掲っていたのだし、その操作は、女性でも強《あなが》ち出来得ないこともないからであった。熊城はまず、当時半ば開いていた右側の鎧扉《よろいど》
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