クかに初期の手砲《ハンドキャノン》を二つ三つ見るにすぎなかった。しかし、それ等陳列品を巡視しているうちに、恐らく法水は、彼が珍蔵しているグロースの「古代軍器書」を、この際持参しなかったことが悔まれたに違いない。何故なら、彼は時折嘆息し、あるいは細めた眼を、細刻や紋章に近づけたりなどして、たしかにこの戦具変遷の魅力は、彼の職務を忘れさせたほどに、恍惚とさせたに相違なかったのである。
[#火術弩の図(fig1317_42.png)入る]
 しかし、室内を一巡して、ようやく水牛の角と海豹《アザラシ》の附いた北方海賊《ヴァイキング》風の兜の前まで来ると、彼は側《かたわら》の壁面にある、不釣合な空間に注いだ眼を返して、すぐその前の床から、一張の火術弩《かじゅつど》を拾い上げた。それは、全長三尺もあるフィンランダー式([#ここから割り注]上図参照[#ここで割り注終わり])のもので、火薬を絡めた鬼箭《おにや》を発射して、敵塞に射込み、殺傷焼壊を兼ねるという酷烈な武器だった。ところで、その構造を概述すると、弓形に附けられた撚紐《ひねりひも》の弦《つる》を中央の把手《ハンドル》まで引き、発射する時は、そ
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