閨A自己を防衛するに必要な虚言だけは、許されねばならない――とね。しかし、無論僕は、それだけでクリヴォフを律しようとするのじゃない。僕はあくまで、統計上の数字というものを軽蔑する。だがしかしだ。あの女は、一場の架空談を造り上げて、実際見もしなかった人物が、寝室に侵入したと云った。いかにも、それだけは事実なんだよ」
「ああ、あれが虚妄《うそ》だとは」検事は眉を跳ね上げて叫んだ。
「すると君は、その事をどこの宗教会議で知ったのだね」
「どうして、そんな散文的なもんか」と法水は力を罩《こ》めて云い返した。「ところで、法心理学者のシュテルンに、『|供述の心理学《プシヒョロギー・デル・アウスザーゲ》』という著述がある。ところが、その中であのブレスラウ大学の先生が、予審判事にこういう警語を発しているのだ。――訊問中の用語に注意せよ。何故なら、優秀な智能的犯罪者と云えるほどの者は、即座に相手が述べる言葉のうちの、個々の単語を綜合して、一場の虚妄談を作り上げる術《すべ》に巧みなればなり――と。だから、あの時僕は、その分子的な聯想と結合力とを、反対に利用しようとしたのだよ。そして、試みにレヴェズに向って
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