「ない旗太郎と、クリヴォフとそのどっちかのうちに、犯人の署名《サイン》があるのではないかと思うのだよ」
「うん、それがすこぶる悪魔的な冗談なんだ。考えれば考えるほど、慄然《ぞっ》となってくる。第一、この大芝居を仕組んだ作者というのは、けっして犯人自身ではないのだ。つまりその筋書《プロット》が、あの五芒星呪文の本体なんだよ。リュッツェンの役では、軽騎兵ブラーエとその母体である暗殺者の魔法錬金士オッチリーユとの関係だったものが、この事件に来ると、[#ここから横組み]犯人+X[#ここで横組み終わり]の公式に変ってしまうのだ」と法水は、この妖術めいた符合の解釈を、ぜひなく事件の解決後に移したけれども、続いて凄気を双眼に泛《うか》べて、黒死館の悪魔を指摘した。
「ところで、そのブラーエが、オッチリーユ[#「オッチリーユ」は底本では「オッチリーエ」]からの刺者であることが判ると、そこで、彼の本体を闡明《せんめい》する必要があると思う。それが、|二重の裏切《ダブル・ダブルクロッス》なんだ。旧教徒《カトリック》と対抗して比較的|猶太人《ジュウ》に穏かだったグスタフス王を暗殺したのは、新教徒《プロテスタ
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