塔g》から受けた恩恵と、彼の種族に対するとの両様の意味で、|二重の裏切《ダブル・ダブルクロッス》じゃないか。つまり、ハートの史本にはないけれども、プロシア王フレデリック二世の伝記者ダヴァは、軽騎兵ブラーエを、プロック生れの波蘭猶太人《ポウリッシュ・ジュウ》だと曝《あば》いている。そして、その本名が、ルリエ・クロフマク・クリヴォフ[#「クリヴォフ」に傍点]なんだ!」
その瞬間、あらゆるものが静止したように思われた。ついに、仮面が剥がれて、この狂気芝居は終ったのだ。常に審美性を忘れない法水の捜査法が、ここにもまた、火術初期の宗教戦争で飾り立てた、華麗きわまりない終局《キャタストロフ》を作り上げたのだった。しかし、検事は未だに半信半疑の面持で、莨《たばこ》を口から放したまま茫然《ぼんやり》と法水の顔を瞶《みつ》めている。それに法水は、皮肉に微笑みながらも、ハートの史本を繰りその頁《ページ》を検事に突き付けた。
(グスタフス王の歿後、ワイマール侯ウイルヘルムの先鋒銃兵《フロント・マスケチーア》ホイエルスヴェルダに現われるに及び、初めて彼が、シレジアに野心ある事明らかとなれり)
「ねえ支倉君、
前へ
次へ
全700ページ中379ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング