@そうだ支倉《はぜくら》君。しかし、君がそれを意識して云ったのなら、たいしたものだよ。今度の火精《ザラマンダー》には、けっして今までのような陰険|朦朧《もうろう》たるものはないと思うのだ。きっと犯人の古典《クラシック》好みから、ロドマンの円弾《まるだま》が海盤車《ひとで》のような白煙を上げて炸裂《さくれつ》するだろうよ」
「ああ、相変らず豪壮な喜歌劇《オペレッタ》かね。それなら、どうでもいいが」と熊城はいったん忌々《いまいま》しそうに舌打ちしたが、坐り直した。「しかし、論拠のあるものなら、一応は聴かせてもらおう」
「勿論あるともさ」法水は無雑作に頷《うなず》いたが、その顔には制しきれない昂奮の色が現われていた。「と云うのは、今度の火精《ザラマンダー》だけに、水精《ウンディヌス》・風精《ジルフス》――と前例のある、性別転換が行われてないという事なんだ。ところで、あの五芒星呪文に現われている四つの精霊だが、それぞれに水精《ウンディネ》・風精《ジルフェ》・火精《ザラマンダー》・地精《コボルト》――と、物質構造の四大要素を代表している。云うまでもなく、中世の錬金道士《パラツェリスト》が仮想して
前へ
次へ
全700ページ中338ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング