驍ニ、詰められていた息が一度に吐かれた。そして、昂奮を投げ交すような声でしばらく騒然となっていたが、やがて熊城が、蹴散らすようにして記者達を追い出してしまうと、再びいつものような三人だけの世界に戻った。法水はしばらく凝然《じっ》と考えていたが、稀《めず》らしく紅潮を泛《うか》べた顔を上げて云った。
「ねえ支倉君、とうとう僕は、ある一つの結論に到達したのだ。勿論外包的だよ。全部の公式はとうてい判っちゃいないがね。しかし、個々の出来事からでも、共通した因数《ファクター》を知ることが出来たとしたら、どうだろう」と二人の顔をサッと掠《かす》めた、驚愕《きょうがく》の色に流眄《ながしめ》をくれて、「ところで君は、この事件の疑問一覧表を作ってくれたはずだったね。では、その一箇条一箇条の上に、僕の説を敷衍《ふえん》させてゆくことにしようじゃないか」
検事が固唾《かたず》を嚥《の》みながら、懐中の覚書を取り出した時だった。扉《ドア》が開いて、召使が一通の速達を法水に手渡しした。法水は、その角封を開いて内容を一瞥《いちべつ》したが、格別の表情も泛《うか》べずに、すぐ無言のまま卓上の前方に投げ出した。と
前へ
次へ
全700ページ中333ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング