ノ達しても依然発育した胸腺を有する、一種の特異体質者に相違ないのである。しかしてその方法は、頸輪《くびわ》で頸動脈を強く緊縛したために脳貧血を起し、そのまま軽度の朦朧状態に陥ったのと、鎧《よろい》を横向きに着させたために、胸板の才鎚環《さいづちかん》で強く鎖骨上部が圧迫され、その圧力が、左無名静脈に加わったのが主因であろう。したがって、それに注入する胸腺静脈に鬱血をきたし、さらに、それが胸腺にも及んで鬱血肥大を起したので、当然気管を狭搾《きょうさく》し、やや長時間にわたる漸増的な窒息の結果、死に達《いた》らしめたものであると思う。しかしながら、解剖所見の発表を見るに、それには胸腺についてなんら記されているところはない。けれども、そうして不問に附せられているとは云い条、それ等の事実は、不可思議なる被害者の呼吸と重大なる因果関係を有するものである。さらに、その要点に言及すれば、何故に鏘々《そうそう》たる法医学者達が、二つの切創《きりきず》がともに中以上の血管では動脈を避け、静脈のみを胸腔にかけて抉《えぐ》っているのに気付かぬのであろうか。そこに、人間生理の大原則を顛覆させた、犯人の詭計《き
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