ネ色があるいは線をなし塊状をなしていて――色彩の雑群を作っている所が、すなわちそれだったのです。ところで、点描法《ポアンチリズム》の理論を御存じでしょうか。色と色を混ぜる代りに、原色の細かい線や点を交互に列べて、それをある一定の距離を隔てて眺めさせると、始めて観者の視覚の中で、その色彩分解が綜合されるのを云うのですよ。勿論、それより些《わず》かでも前後すれば、たちまち統一が破れて、画面は名状すべからざる混乱に陥ってしまうのです。つまりそれが、ルーアン本寺の門を描いたモネエの手法なのですが、それをいっそう法式化したばかりでなく、さらに理論的に一段階進めたものと云うのが、あの画中に隠されてあったのです」と法水はそこまで云うと、鋼鉄扉を閉じさせて、「では、一つ実験してみますかな――あの混乱した雑色の中に何が隠されているのか? 最初に熊城君、その壁にある三つの開閉器《スイッチ》を捻《ひね》ってくれ給え」
 さっそく熊城が法水の云うとおりにすると、最初に「腑分図」の上方にある灯が消え、続いて、右手のド・トリー作「一七二〇年|馬耳塞《マルセーユ》の黒死病《ペスト》」の上方から、右斜めに落ちている一
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