ニ貴方は、デイやグラハムの黒鏡魔法《ブラック・ミラー・マジック》を御存じでしょうか」とひとまず念を押してから、烟《けむり》を吐いて語りはじめた。
「先刻《さっき》も云ったとおり、その解語《キイ》と云うのが、階段の両裾にあった二基の中世甲冑武者なんです。勿論装飾用のもので、たいした重量ではありませんが、あれは、御承知のように、ちょうど七時前後――折柄傭人達の食事時間を狙って、一足飛びに階段廊まで飛び上ってしまったのです。それに、双方とも長い旌旗《せいき》を持っているのですが、僕は最初、それを旌旗の入れ違いから推断して、犯人の殺人宣言と解釈したのです。しかし、ちょっと神経に触れたものがあったので、ひとまず二旒《にりゅう》の旌旗と、その後方にあるガブリエル・マックスの『腑分図』とを見比べて見ました。勿論画中の二人の人物には、津多子夫人の在所《ありか》を指摘するものはなかったのですが、その時ふと、二旒の旌旗が画面のはるか上方を覆うているのに気がついたのです。そこに、ダマスクスへの道を指し示している、里程標があったのですよ。つまり、その辺一帯の、一見|絵刷毛《ブラッシュ》を叩き付けたような、様々
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