傍説《エピソード》なんですよ。あの人は、死体となってからも、喝采《かっさい》をうける時機を失ってしまったのですからね。それが、昨夜の八時以前だったのです。その頃には既《とう》に津多子夫人は、遠く精霊界《フェアリー・ランド》に連れ去られていたのです。ですから、あの人こそ、ダンネベルグ夫人以前の……、つまり、この事件では最初の犠牲者だったのですよ」
「なに、殺されて※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」真斎は恐らく電撃に等しい衝撃《ショック》をうけたらしい。そして、思わず反射的に問い返した。「す、すると、その死体はどこにあると云うのです?」
「ああ、それを聴いたら、貴方はさぞ殉教的な気持になられるでしょうが」と法水は、いったん芝居がかった嘆息をして、「実を云うと、貴方はその手で、死体の入っている重い鋼鉄|扉《ど》を閉めたのでしたからね」とキッパリ云い放った。
 とたんに三つの顔から、感覚がことごとく失せ去ったのも無理ではない。法水は、あたかもこの事件が彼自身の幻想的《ファンタスチック》な遊戯ででもあるかのように、吐き続ける一説ごとに、奇矯な上昇を重ねてゆく。そして、ちょうどこの超頂点《ウルト
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