しかったであろう。法水の神経運動《ナアヴァシズム》が微妙な放出を続けて、上りつめた絶頂がこれだったのか。しかし、検事も熊城も痺《しび》れたような顔になっていて、容易に言葉も出なかった。と云うのは、これがはたして法水の神技であるにしても、とうていそのままを真実として鵜呑《うの》みに出来なかったほど、むしろ怖れに近い仮説だったからである。真斎は手働四輪車を倒れんばかりに揺って、激しく哄笑《こうしょう》を始めた。
「ハハハハハ法水さん、下らん妖言浮説は止めにしてもらいましょう。貴方が云われる津多子夫人は、昨朝早々にこの館を去ったのですじゃ。だいたい、どこに隠れていると云われるのです。人間|業《わざ》で入れる個処《ところ》なら、今までに残らず捜し尽されておりましょう。もし、どこかに潜んで居るのでしたら、儂《わし》から進んで犯人として引き出して見せますわい」
「どうして、犯人どころか……」法水は冷笑を湛えて云い返した。「その代り鉛筆と解剖刀《メス》が必要なんですよ。そりゃ僕も、一度は津多子夫人を、風精《ジルフェ》の自画像として眺めたことはありましたがね。ところが田郷さん、これがまた、悲痛きわまる
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