いるではありませんか。勿論それは、弛緩した心理状態にありがちな盲点現象です。さらに、前後の二つを対比してみると、同じ thrice《スライス》 一字でも、『ゴンザーゴ殺し』に現われているのと『|髪盗み《レープ・オヴ・ゼ・ロック》』のそれとでは、心理的影響において、いちじるしい差異があるのを測ることが出来たのでした。そこで僕は、結論をよりいっそう確実にするために、今度はセレナ夫人から、昨夜この館にいた家族の数を引き出そうと試みました。ところが、僕の云ったゴットフリートの――|吾今ただちに悪魔と一つになるを誰か妨げ得べき《ウァス・ヒエルテ・ミッヒ・ダス・イヒス・ニヒト・ホイテ・トイフェル》――に対して、セレナ夫人は、その次句の――|短剣の刻印に吾身は慄え戦きぬ《ゼッヒ・シュテムペル・シュレッケン・ゲエト・ドゥルヒ・マイン・ゲバイン》――で答えたのです。しかし、何故か sech《ゼッヒ》([#ここから割り注]短剣[#ここで割り注終わり])と云うと狼狽《ろうばい》の色が現われて、しかも、|短剣の刻印《ゼッヒ・シュテムペル》と、頭韻《アリテレーション》を響かせて一つの音節《シラブル》にして云うと
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