ですから貴方は、それが僕を刺戟するのに気がついたので、すぐに周章《あわ》てふためいて云い直したのでしょう。けれども、その復誦には、今も云った韻律法を無視しなければなりませんでした。それが僕の思う壺だったので、かえって収拾のつかない混乱を招いてしまったのです。と云うのは、thrice《スライス》 を避けて、前節の Ban《バン》 と続けた Banthrice《バンスライス》 が、Banshee《バンシイ》([#ここから割り注]ケルト伝説にある告死婆[#ここで割り注終わり])が変死の門辺に立つとき化けると云う老人――すなわち Banshrice《バンシュライス》 のように響くからなんですよ。ねえ田郷さん、僕が持ち出した|汝真夜中の《ザウ・ミックスチュア・ランク》……の一句には、こういう具合に、二重にも三重にもの陥穽《かんせい》が設けられてあったのです。勿論僕は、貴方がこの事件で、告死老人《バンシュライス》の役割をつとめていたとは思いませんが、しかしその、魔女《ヘカテ》が呪い毒に染んだという|三たび《スライス》は、いったい何事を意味しているでしょうか。ダンネベルグ夫人……易介……そうして三度
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