のだとしたら、胃の空虚には毫《ごう》も怪しむところはない。それから、尿にも反応的変化はないし、定量的に証明するものもない。ただ徒《いたず》らに、燐酸塩が充ち溢れているばかりなんだ。あの増量を、僕は心身疲労の結果と判断するが、どうだい」
「明察だ。あの猛烈な疲労さえなければ、僕は伸子の観察を放棄してしまっただろう」法水は何事かを仄《ほの》めかして、相手の説を肯定したが、「ところで、君が投じた試薬《リアクティヴ》は、たったそれだけかね」
「冗談じゃない。結局徒労には帰したけれども、僕は伸子の疲労状態を条件にして、ある婦人科的観察を試みたんだ。法水君、今夜の法医学的意義は、Pennyroyal《ペニイロイヤル》([#ここから割り注]毒性を有する薬草[#ここで割り注終わり])一つに尽きるんだよ。あの×・××ぐらいを健康未妊娠子宮に作用させると、ちょうど服用後一時間ほどで、激烈な子宮痳痺[#「痳痺」はママ]が起る。そして、ほとんど瞬間的に失神類似の症状が現われるんだ。ところが、その成分である Oleum Hedeomae Apiol さえ検出されない。勿論あの女には、既往において婦人科的手術をう
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