けてもいいと思う。まさしく単純失神《トランス》と断言して差支えないのだ。ところで、ここで特に、熊城君に一言したいのだが、あの女が兇器の鎧通しを握っていたと聴いて、僕は|数当て骨牌《チックタッキング・カード》の裏を見たような気がしたのだよ。あの失神は、実に陰険|朦朧《もうろう》たるものなんだ。あまりに揃い過ぎているじゃないか」
「なるほど」法水は失望したように頷《うなず》いたが、「とにかく細目を承《うけたまわ》ろうじゃないか。あるいはその中から、君の耄碌《もうろく》さ加減が飛び出して来んとも限らんからね。ところで、君の検出法は?」
 乙骨医師はところどころ術語を交えながら、きわめて事務的に彼の知見を述べた。
「無論吸収の早い毒物はあるにゃあるがね。それに、特異性のある人間だと、中毒量はるか以下のストリキニーネでも、屈筋震顫症《アテトージス》や間歇強直症《テタニイ》に類似した症状を起す場合がある。しかし、中毒としては末梢的所見はないのだし、胃中の内容物はほとんど胃液ばかりなんだ。――これはちょっと不審に思われるだろう。けれども、あの女が消化のよい食物を摂ってから二時間ぐらいで斃《たお》れた
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