》のような計謀を、露わに曝《さら》け出したような気がしたけれども、しかし彼の巧妙な朗誦法《エロキューション》は、妙に筋肉が硬ばり、血が凍りつくような不気味な空気を作ってしまった。クリヴォフ夫人は、それまで胸飾りのテュードル薔薇《ローズ》([#ここから割り注]六弁の薔薇[#ここで割り注終わり])を弄《いじ》っていた手を卓上に合わせて、法水に挑み掛るような凝視を送りはじめた。が、その間のなんとなく一抹《いつまつ》の危機を孕《はら》んでいるような沈黙は、戸外で荒れ狂う吹雪《ふぶき》の唸《うな》りを明瞭《はっきり》と聴かせて、いっそう凄愴なものにしてしまった。法水はようやく口を開いた。
「しかし、原文には、|また真昼を野の火花が散らされるばかりに、日の燃ゆるとき《ウント・ミタハス・ウエン・ディ・ゾンネ・グリュート・ダス・ファスト・ディ・ハイデ・フンケン・スプリュート》――とあるのですが、そこは不思議なことに、真昼や明りの中では見えず、夜も、闇でなくては見ることの出来ぬ世界なのです」
「闇に見える※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」レヴェズ氏は警戒を忘れたように反問した。
法水はそれには答えず
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