人為的に作ろうとするのが、呪詛じゃないか。ともあれ、これを見給え。実は、先刻《さっき》図書室で見たマクドウネルの梵英辞典に、見なれない蔵書印が捺《お》してあった。しかし、いま考えると、それがディグスビイの印らしいので、それから推すとたぶんこの葬龕《カタファルコ》も、あの男の奇異《ふしぎ》な趣味と、病的な性格を語るものに相違ないのだよ」
と法水が、聖像の周囲《ぐるり》にある雪を払い退《の》けると、鍛鉄の十字架から浮び上った痛ましい全身には、みるみる不思議な変化が現われていった。それは、あるいは彼が魔法を使ったのではないかと疑われたほどに、よもや人間の世界にあろうとは思われぬ奇怪な符号だった。磔身《たくしん》の頭から爪尖《つまさき》までが、白く※[#底本が「ラン」とルビを付した梵字(fig1317_15.png)、174−7]《ラン》形で残されてしまったからだ。しかし、法水は静かに、聖像から変化した不可解な記号の事を説きはじめた。
「ねえ支倉君、黒呪術《ブラックマジック》は異教と基督《キリスト》教を繋ぐ連字符である――とボードレールが云うじゃないか。まさしくこれは、調伏《ちょうぶく》呪語
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