か》べた。何故なら、硫酸マグネシウムに沃度《ヨード》フォルムと抱水クロラールは[#「抱水クロラールは」は底本では「泡水クロラールは」]、それぞれに、きわめてありふれた普通薬ではないか。検事も怪訝《けげん》そうに首を傾《かし》げて、呟《つぶや》いた。
「下剤([#ここから割り注]瀉痢塩が精製硫酸マグネシウムなればなり[#ここで割り注終わり])、殺菌剤、睡眠薬だ。犯人は、この三つで何をしようとするんだろう?」
「いや、すぐに捨ててしまったはずだよ。ところが、嚥《の》まされたのは吾々《われわれ》なんだ」と法水はここでもまた、彼が好んで悲劇的準備《トラギッシェ・フォルベライツング》と呼ぶ奇言を弄《もてあそ》ぼうとする。
「なに僕等が」と、熊城は魂消《たまげ》て叫んだ。
「そうさ、匿名《とくめい》批評には、毒殺的効果があると云うじゃないか」法水はグイと下唇を噛み締めたが、実に意表外な観察を述べた。「で、最初に硫酸マグネシウムだが、勿論内服すれば、下剤に違いない。しかし、それをモルヒネに混ぜて直腸注射をすると、爽快な朦朧《もうろう》睡眠を起すのだ。また、次の沃度《ヨード》フォルムには、嗜眠性の中毒
前へ
次へ
全700ページ中214ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング