陰陽教《ゾロアスター》([#ここから割り注]ツァラツストラが創始せる波斯(ペルシヤ)の苦行宗教[#ここで割り注終わり])の呪法綱領なんだよ。神格よりうけたる光は、その源の神をも斃《たお》す事あらん――と云ってね。勿論その呪文の目的は、接神の法悦を狙《ねら》っている。つまり、飢餓入神を行う際に、その論法を続けると、苦行僧に幻覚の統一が起ってくると云うのだ」と法水は彼に似げない神秘説を吐いたが、云うまでもなく、奥底知れない理性の蔭に潜んでいるものを、その場去らずに秤量《しょうりょう》することは不可能だった。しかし、法水の言《ことば》を、神意審問会の異変と対照してみると、あるいは、死体|蝋燭《ろうそく》の燭火《しょくか》をうけた乾板が、ダンネベルグ夫人に算哲の幻像を見せて、意識を奪ったのではないか。――と云うような幽玄きわまる暗示が、しだいに濃厚となってくるけれども、その矢先思いがけなく、それをやや具体的に仄《ほの》めかして、法水は立ち上った。
「しかし、これでいよいよ、神意審問会の再現が切実な問題になってきたよ。さて、裏庭へ行って、この見取図に書いてある二条の足跡を調べることにするかな」
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