も、その時七人のうちで室《へや》を出たものはなかったのだ。だいたい階下の窓から落されたものなら、こんなに細かく割れる気遣いはないよ」
「うん、その死霊《おばけ》は恐らく事実だろうよ」と法水はプウと煙の輪を吐いて、「しかし、彼奴《あいつ》がその後に死んでいるという事も、また事実だろう」と意外な奇説を吐いた。「だって、ダンネベルグ事件とそれ以後のものを、二つに区分して見給え。僕の持っているあの逆説《パラドックス》が、綺麗《きれい》さっぱりと消えてしまうじゃないか。つまり、風精《ジルフェ》は水神《ウンディネ》のいたのを知って、それを殺したのだ。けっして、あの二つの呪文が連続しているのに、眩《くら》まされちゃならん。ただし、犯人は一人だよ」
「では、易介以外にも」熊城は吃驚《びっくり》して眼を円くしたが、それを検事が抑えて、
「なあに、捨てておき給え。自分の空想に引っ張り廻されているんだから」と法水を嗜《たしな》めるように見た。「どうも、君の説は世紀児的《アンファン・デュ・シエクル》だ。自然と平凡を嫌っている。粋人的な技巧には、けっして真性も良識もないのだ。現に、先刻《さっき》も君は夢のような
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