、通性論哲学者であり、かつまた中世著名の物理学者ことに心霊術士としては古今無双ならんと云わる。[#ここで割り注終わり])が携帯用風琴《レガール》で行《おこな》った時も同じ事なんだ。それから近世になって、伊太利《イタリー》の大霊媒ユーザピア・パラルディノが、金網の中に入れた手風琴《アッコーディオン》を動かしたけれども、肝腎《かんじん》の音色については、狂学者フラマリオンすら語るところがないのだ。つまり、心霊現象でさえ、時間空間には君臨することが出来ても、物質構造《マッス》だけにはなんらの力も及ばないことが判るだろう。ところが熊城君、その物質構成の大法則が、小気味よく顛覆《てんぷく》を遂げているんだ。ああ、なんという恐ろしい奴《やつ》だろう。風精《ジルフェ》――空気と音の妖精――やつは鐘を叩いて逃げてしまったのだ」
 結局倍音についての法水の推断は、明確《はっきり》と人間思惟創造の限界を劃したに止まっていた。しかし、犯人は、それすらあっけなく踏み越えて、誰しも夢にも信じられなかったところの、超心霊的な奇蹟をなし遂げているのだ。それであるからして、紛乱した網を辛《や》っと跳ね退けたかと思うと
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