って、その後の事はいっさい判りません――て。いや、そればかりじゃない。あの倍音の中には、失神の原因をはじめとして、鎧通しを握っていた事から、先刻《さっき》僕が指摘した廻転椅子の矛盾に至るまでの、ありとあらゆる疑問が伏さっているに違いないのだ。事によると、易介事件の一部まで、関係してやしないかと思われるくらいだよ」
「ウン、たしかに心霊主義《スピリチュアリズム》だ」と検事が暗然と呟《つぶや》くと、法水はあくまで自説を強調した。
「いやそれ以上さ。だいたい、楽器の心霊演奏は必ずしも例に乏しい事じゃない。シュレーダーの『生体磁気説《レーベンス・マグネチスムス》』一冊にすら、二十に近い引例が挙げられている。しかし、問題は音の変化なのだ。ところがさしもの聖オリゲネスさえ嘆称を惜しまなかったと云う、千古の大魔術師――亜歴山府《アレキサンドリア》のアンティオクスでさえも、水風琴《ヒドラリウム》の遠隔演奏はしたと云うけれど、その音調についてはいっこうに記されていない。また、例のアルベルツス・マグヌス([#ここから割り注]十三世紀の末、エールブルグのドミニク僧団にいた高僧。錬金魔法師の声名高しといえども
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