ツルヴェール史詩集成』の中に、ゲルベルトに関する妖異譚が載っている。勿論当時のサラセン嫌悪の風潮で、ゲルベルトをまるで妖術師扱いにしているのだが、とにかくその一節を抜萃《ぬきだ》してみよう。一種の錬金抒情詩《アルケミー・リリック》なんだよ。

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ゲルベルト畢宿七星《アルデパラン》を仰ぎ眺めて
平琴《ダルシメル》を弾ず
はじめ低絃を弾《はじ》きてのち黙す
しかるにその寸後《しばしのち》
側《かたわら》の月琴《タムブル》は人なきに鳴り
ものの怪《け》の声の如く、高き絃音にて応《こた》う
されば
傍人《かたわらのひと》、耳を覆いて遁《のが》れ去りしとぞ
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 ところが、キイゼヴェッテルの「古代楽器史」を見ると、月琴《タムブル》は腸線楽器だが、平琴《ダルシメル》の十世紀時代のものになると、腸線の代りに金属線が張られていて、その音がちょうど、現在の鉄琴《グロッケンシュピール》に近いと云うのだがね。そこで、僕はその妖異譚の解剖を試みたことがあった。ねえ熊城君、中世非文献的史詩と殺人事件との関係《つながり》を、ここで充分|咀嚼《そしゃく》してもらいたいと
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