を双眼に泛《うか》べて立ち止った。
「支倉君、君の一言が大変いい暗示を与えてくれたぜ。君が、倍音はこの鐘のみでは証明出来まい――と云ったことは、とどの詰りが、演奏の精霊主義《オクルチスムス》に代る何物かを捜せ――という事だ。つまり、どこか他の場所に、響石か木片楽器めいたものでもあれば、それを音響学的に証明しろ――という意味にもなる。それに気が附いたので、僕は往昔マグデブルグ僧正館の不思議と唱われた、『ゲルベルトの月琴《タムブル》』――の故事を憶い出したよ」
「ゲルベルトの月琴《タムブル》※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」検事は法水の唐突な変説に狼狽《ろうばい》してしまった。「いったい月琴《タムブル》なんてものが、鐘の化物《ばけもの》にどんな関係があるね」
「そのゲルベルトと云うのが、シルヴェスター二世だからさ。あの呪法典を作ったウイチグスの師父に当るんだ」と法水は気魄の罩《こ》もった声で叫んだ。そして、床に映った朧《おぼ》ろな影法師を瞶《みつ》めながら、夢幻的な韻を作って続ける。
「ところでペンクライク([#ここから割り注]十四世紀英蘭の言語学者[#ここで割り注終わり])が編纂した『
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