失神の原因を作ったと見なけりゃならない。僕は、そこへ反証が挙《あが》りゃしないかと、そればかり懼《おそ》れているところなんだよ。だいたい、包囲形を作って絞り出した結果というのが、[#ここから横組み]|2−1=1《にひくいちはいち》[#ここで横組み終わり]の解答じゃないか。しかし、倍音が……倍音が?」
無論それ以上は混沌の彼方にあった。法水は必死の精気を凝《こ》らしてすべてを伸子に集注しようとした。かつての「コンスタンス・ケント事件」や「グリーン殺人事件」等の教訓が、この場合、反覆的な観察を使嗾《しそう》してくるからである。けれども、百花千弁の形に分裂している撞着の数々は、法水の分析的な個々の説にも、確固たる信念を築かせない。いかにも、外面は逆説反語を巧みに弄《もてあそ》んでいて、壮大な修辞で覆うている。けれども、説き去るかたわら新しい懐疑が起って、彼は呪われた和蘭《オランダ》人のように、困憊彷徨《こんぱいほうこう》を続けているのだ。そして、ついに問題が倍音に衝《つ》き当ってしまうと、法水は再び異説のために引き戻されねばならなかった。突然彼は、天来の霊感でも受けたかのように、異常な光輝
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