の原因が?」と熊城は喘《あえ》ぎ気味に訊ねた。
「ウン疲労時の証言を信ずるな――とシュテルンが云うほどだからね。そこへ何か、予想外の力が働いたとしたら、まさしく絶好な状態には違いないのだ。ただし何もかも、倍音発生の原因が証明された上でだ。あれは確かに、不在証明《アリバイ》中の不在証明《アリバイ》じゃないか」
「では、伸子の弾奏術としてでかい」と検事は驚いて問い返した。「僕はとうてい、あの倍音が鐘だけで証明出来ようとは思わんがね。それより手近な問題は、鎧通しを伸子が握らされたか否《どう》か――にあると思うのだ」
「いや、失神してからは、けっして固く握れるものじゃない」と法水は再び歩きはじめたが、すこぶる気のない声を出した。「勿論それには異説もあるので、僕は専門家の鑑定を求めたのだよ。それに、易介の死とも時間的に包括されている。召使《バトラー》の庄十郎は、当然絶命後一時間と思われる二時に、易介の呼吸を明らかに聴いた――と陳述しているんだが、その時刻には、伸子が経文歌《モテット》を奏でていた。そうすると、最後の讃詠《アンセム》を弾くまでの二十分あまりの間に、易介の咽喉《のど》を切り、そうして
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