妖術精神や、その中に、黴毒《ばいどく》性|癲癇《てんかん》性の人物などがさかんに例証として引かれている――そのくらいの事は、当然憶えてなければならないはずだよ。ところでこのリュデスハイム譚《ものがたり》は、別に引証されてはいないけれども、メールヒェンの『朦朧状態《デームメル・シュテンデ》』を読むと、詩で唱われたオスワルドの喪神状態が、それには科学的に説明されている。その中の単純失神の章に、こうあるのだよ。失神が起ると、大脳作用が一方的に凝集するために、執意はたちまち消え失せてしまって、全身に浮揚感が起ってくる。しかし、一方小脳の作用が停止するのは、やや後であるために、その二つが力学的に作用し合って、無論わずかな間だけれども、全身に横波をうけたような動揺を起す――と云うのだ。ところが、伸子の身体は、その際に自然の法則を無視してしまって、かえって反対の方向に動いているのだよ」と伸子が腰を下していた廻転椅子を、クルッと仰向けにして、その廻転心棒を指差した。「ところで支倉君、僕はいま自然の法則なぞと大袈裟《おおげさ》に云ったけれども、たかがこの椅子の廻転にすぎないのだよ。螺旋《らせん》の方向は
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