ば、ただちに頭《こうべ》を打ち落し、骸《かばね》とともに焚き捨てたり――と。これは漂浪楽人《スカルド》中の詩王イウフェシススの作と云われているが、これを史家ベルフォーレは、十字軍によって北欧に移入された純|亜剌比亜《アラブ》・加勒泥亜《カルデア》呪術の最初の文献だと云い、それが培《つちか》って華《はな》と結んだのがファウスト博士であって、彼こそは中世魔法精神の権化であると結論しているのだ」
「なるほど」と検事は皮肉に笑って、「五月になれば、林檎《りんご》の花が咲き、城内の牛酪《ぎゅうらく》小屋からは性慾的な臭いが訪れて来る。そうなれば、なにしろ亭主が十字軍に行っているのだからね。その留守中に、貞操帯の合鍵を作《こしら》えて、奥方が抒情詩人《ミンネジンゲル》と春戯《いちゃつ》くのもやむを得んだろうよ。だがただしだ。その方向を殺人事件の方に転換してもらおう」
法水は半ば微笑みながら、沈痛な調子で云い返した。
「ずさん[#「ずさん」に傍点]だよ支倉君、君は検事のくせに、病理的心理の研鑽を疎《おろそ》かにしている。もしそうでなければ、『古代丁抹伝説集《パムペピサウ》』などの史詩に現われている
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