に、有利な説明が付いたとしてもだよ。そうなっても倍音の神秘が露《あば》かれない限りは、当然失神の原因に、自企的な疑いを挾まねばならない――とね。どうだい?」
「そりゃ神話だ。マアしばらく休んだ方がいいよ。君は大変疲れているんだ」と熊城はてんで受付けようとはしなかったが、法水はなおも夢見るような調子で続けた。
「そうだ熊城君、事実それは伝説に違いないのだ。ネゲラインの『北欧伝説学』の中に、その昔|漂浪楽人《スカルド》が唱い歩いたとか云う、ゼッキンゲン侯リュデスハイムの話が載っているんだ。時代はフレデリック([#ここから割り注]第五[#ここで割り注終わり])十字軍の後だがマア聴いてくれ給え。――歌唱詩人《バルド》オスワルドは、ヴェントシン([#ここから割り注]ヒヨスの毛茸ならんと云わる[#ここで割り注終わり])を入れたる酒を飲むと見る間に、抱琴《クロッチ》を抱ける身体波のごとくに揺ぎはじめ、やがて、妃ゲルトルーデの膝に倒る。リュデスハイムは、かねてカルパトス島([#ここから割り注]クリート島の北方[#ここで割り注終わり])の妖術師レベドスよりして、ヴェニトシン向気《こうき》の事を聴きいたれ
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