てから気づいたことであったが、当時左端の一つのみが開かれていた。そこ一帯の壁面を室内から見ると、それが、音響学的に設計されているのが判る。一口に云えば巨《おお》きな帆立貝であって、凹状の楕円と云ったら当るかもしれない。たぶんここに鐘鳴器《カリリヨン》を具えるまでは、四重奏団《クワルテット》の演奏室に当てられていたのであろうが、したがって中央の扉にも、外観上位置的に不自然であるばかりでなく、後から壁を切って作られたらしい形跡が残っていた。またその一つのみが素晴らしく大きなもので、ほとんど三メートルを越すかと思われるほどの高さだった。そこから、向う側の壁までの間は、空《がら》んとした側柏《てがしわ》の板張りだった。そして、鐘鳴器《カリリヨン》の鍵盤は、壁を刳形《くりがた》に切り抜いて、その中に収められてある。三十三個の鐘群はそれぞれの音階に調律されていて、すぐ直前の天井に吊されているが、それが鍵盤《キイ》と蹈板《ペダル》とによって……その昔カルヴィンが好んで耳を傾け、またネーデルランドの運河の水に乗ると、風車が独りでに動くとか伝えられる、あの物寂びた僧院的な音を発する仕掛になっていた。しか
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