の一節はついに演奏されなかったのだ。それに最後に聞えた、日午《ひる》は――のところが、不思議にも倍音([#ここから割り注]ド・レミ[#「レミ」はママ]・ファと最終のドを基音にした、一オクターヴ上の音階[#ここで割り注終わり])を発している。ねえ、支倉君、これは、けだし一般的な法則じゃあるまいと思うよ」
「では、とりあえず君の評価を承《うけたまわ》ろうかね」と熊城が割って入ると、法水の眼に異常な光輝が現われた。
「それが、まさに悪夢なんだ。怖ろしい神秘じゃないか。どうして、散文的に解る問題なもんか」と一旦は狂熱的な口調だったのが、しだいに落着いてきて、「ところで、最初易介が、すでにこの世の人でないとしてだ――勿論何秒か後には、その厳然たる事実が判るだろうと思うが、さてそうなると、家族全部の数に一つの負数が剰《あま》ってしまうのだ。で、最初は四人の家族だが、演奏を終ってすぐ礼拝堂を出たにしても、それから鐘楼へ来るまでの時間に余裕がない。また、真斎はあらゆる点で除外されていい。すると、残ったのは伸子と久我鎮子になるけれども、一方、鐘鳴器《カリリヨン》の音がパタリと止んだのではなく、しだいに弱
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