めい》されるのではないかと思われるのだった。が、指令を終った後の法水の態度は、また意外だった。再び旧《もと》の暗い顔色《がんしょく》に帰って、懐疑的な錯乱したような影が往来を始めた。それから拱廊《そでろうか》の方へ歩んで行くうちに、思いがけない彼の嘆声が、二人を驚かせてしまった。
「ああ、すっかり判らなくなってしまったよ。易介が殺されて犯人が鐘楼にいるのだとすると、あれほど的確な証明が全然意味をなさなくなる。実を云うと、僕は現在判っている人物以外の一人を想像していたんだが、それがとんだ場所へ出現してしまった。まさかに別個の殺人ではないだろうがね」
「それじゃ、何のために僕等は引っ張り廻されたんだ?」検事は憤激の色を作《な》して叫んだ。「だいたい最初に君は、易介が拱廊の中で殺されていると云った。ところが、それにもかかわらず、その口の下で見当違いの鐘楼を見張らせる。軌道がない。全然無意味な転換じゃないか」
「さして、驚くには当らないさ」と法水は歪んだ笑を作って云い返した。「それと云うのが、鐘鳴器《カリリヨン》の讃詠《アンセム》なんだよ。演奏者は誰だか知らないが、しだいに音が衰えてきて、最終
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