くなっていった点を考えると、あの二人がともに鐘楼にいたという想像は、全然当らないと思う、勿論その演奏者に、何か異常な出来事が起ったには違いないけれども、その矢先、讃詠《アンセム》の最後に聞えた一節が、微かながら倍音を発したのだ。云うまでもなく、鐘鳴器《カリリヨン》の理論上倍音は絶対に不可能なんだよ。すると熊城君、この場合鐘楼には、一人の人間の演奏者以外に、もう一人、奇蹟的な演奏を行える化性のものがいなければならない。ああ、あいつ[#「あいつ」に傍点]はどうして鐘楼へ現われたのだろうか?」
「それなら、何故先に鐘楼を調べないのだね?」と熊城が詰《なじ》り掛ると、法水は、幽に声を慄《ふる》わせて、
「実は、あの倍音に陥穽《かんせい》があるような気がしたからなんだ。なんだか微妙な自己曝露のような気がしたので、あれを僕の神経だけに伝えたのにも、なんとなく奸計《たくらみ》がありそうに思われたからなんだよ。第一犯人が、それほど、犯行を急がねばならぬ理由が判らんじゃないか。それに熊城君、僕等が鐘楼でまごまごしている間、階下の四人はほとんど無防禦なんだぜ。だいたいこんなダダっ広い邸の中なんてものは、ど
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