《つか》を握ってしまう。そして、その瞬後扉に衝突して、自分が束を握った刃が心臓を貫く。つまり、高齢で歩行の遅《のろ》い博士に、敷物《カーペット》に波を作りながら音響を立てずして追い付ける速力と、その機械的な圧進力――。それから、束を握らせるために、両腕を自由にしておかねばならないので、何よりまず膝膕窩《ひかがみ》を刺戟して、イエンドラシック反射を起さねばならない――。そういうすべての要素を具備しているのが、この手働四輪車でして、その犯行は寸秒の間に、声を立てる間《ま》がなかったほど恐ろしい速度で行われたのでした。ですから、貴方の不具な部分をもってせずには、誰一人博士に、自殺の証跡を残して、息の根を止めることは不可能だったのですよ」
「すると、敷物《カーペット》の波は何のためだい」熊城が横合から訊ねた。
「それが、内惑星軌道半径の縮伸じゃないか。いったん点《ピリオド》にまで縮んだものを、今度は波の頂点に博士の頸《くび》を合わせて、敷物《カーペット》を旧《もと》どおりに伸ばしていったのだ。だから、束《つか》を握り締めたままで、博士の死体は室《へや》の中央に来てしまったのだよ。勿論、空室《あ
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