へ達するまでの経路をお訊きでしたか」
「いいえ」と鎮子は頸《くび》を振って、「それに伸子さんは、ダンネベルグ様が卒倒なさるとすぐ、隣室から水を持ってまいったというほどですし、ほかにも誰一人として、座を動いた方はございませんでした。これだけ申せば、私がこの黙示図に莫迦《ばか》らしい執着を持っている理由がお判りでございましょう。勿論その人影というのは、吾々《われわれ》六人のうちにはないのです。と云って、傭人は犯人の圏内にはございません。ですから、この事件に何一つ残されていないと云うのも、しごく道理なんでございますわ」
 鎮子の陳述は再び凄風を招き寄せた。法水はしばらく莨《たばこ》の赤い尖端を瞶《みつ》めていたが、やがて意地悪げな微笑を泛《うか》べて、
「なるほど、しかし、ニコル教授のような間違いだらけな先生でも、これだけは巧いことを云いましたな。結核患者の血液の中には、脳に譫妄《せんもう》を起すものを含めり――って」
「ああ、いつまでも貴方は……」といったん鎮子は呆《あき》れて叫んだが、すぐに毅然《きぜん》となって、「それでは、これを……。この紙片が硝子の上に落ちていたとしましたなら、易介
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