実体が仮象よりも華やかでないのは道理ですわ。しかし、そんなハム族の葬儀用記念物よりかも、もしその四角の光背と死者の船を、事実目撃した者があったとしたらどうなさいます?」
「それが貴女《あなた》なら、僕は支倉《はぜくら》に云って、起訴させましょう」と法水は動じなかった。
「いいえ、易介なんです」鎮子は静かに云い返した。「ダンネベルグ様が洋橙《オレンジ》を召し上る十五分ほど前でしたが、易介はその前後に十分ばかり室《へや》を空けました。それが、後で訊くとこうなんです。ちょうど神意審問の会が始まっている最中《さなか》だったそうですが、その時易介が裏玄関の石畳の上に立っていると、ふと二階の中央で彼の眼に映ったものがありました。それが、会が行われている室の右隣りの張出窓で、そこに誰やら居るらしい様子で、真黒な人影が薄気味悪く動いていたと云うのです。そして、その時地上に何やら落したらしい微かな音がしたそうですが、それが気になってたまらず、どうしても見に行かずにはいられなかったと申すのでした。ところが、易介が発見したものは、辺り一面に散在している硝子の破片にすぎなかったのです」
「では、易介がその場所
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