の言《ことば》には形がございましょう」と云って、懐中《ふところ》から取り出したものがあった。それは、雨水《あまみず》と泥で汚れた用箋の切端《きれはし》だったが、それには黒インクで、次のような独逸《ドイツ》文が認《したた》められてあった。
[#天から3字下げ]Undinus《ウンディヌス》 sich《ジッヒ》 winden《ヴィンデン》
「これじゃとうてい筆蹟を窺《うかが》えようもない。まるで蟹《かに》みたいなゴソニック文字だ」といったん法水は失望したように呟《つぶや》いたが、その口の下から、両眼を輝かせて、「オヤ妙な転換があるぞ。元来この一句は、水精《ウンディネ》よ蜿《うね》くれ――なんですが、これには、女性の Undine《ウンディネ》 に us をつけて、男性に変えてあるのです。しかし、これが何から引いたものであるか、御存じですか。それから、この館《やかた》の蔵書の中に、グリムの『古代独逸詩歌傑作に就《つ》いて』かファイストの『独逸語史料集』でも」
「遺憾《いかん》ながら、それは存じません。言語学の方は、のちほどお報せすることにいたします」と鎮子は案外率直に答えて、その章句の解釈が
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