黷ス表紙を、見るような気もするのだった。すでに、肉体的な類似を求めるのが、困難なしろものだったのである。また、その指頭に立てる屍体|蝋燭《ろうそく》には、一々向きと印しがついていて、それはやや光沢の鈍いような感じはするけれども、外見はいっこうに、通常の白蝋と変りはなかった。そして、端から火を移してゆくと、ジイジイっと、まるで耳馴れた囁《ささや》きを聴くような音色を立てて点《とも》りはじめ、赭《あか》ばんだ――ちょうど血を薄めたような光線が、室《へや》の隅々に拡がっていった。そうしているうちに、ダンネベルグ夫人の位置にいた法水の視野を、異様に朦朧《もうろう》としたものが覆いはじめてきた。それは、一種特別な臭気を持った、霧のようなもので、しだいに根元からかけて五本の蝋身を包みはじめ、やがて、焔が揺れはじめて瞬《またた》き出すと、室内は、スウッと一段下降したように薄暗くなった。そのとたん、法水の手が差し伸べられて、屍体蝋燭を一つ一つに調べはじめた。すると、五本ともその根元に――すなわち、中央の三本は両側に一つ一つ、両端の二本は、内側に一つ――不可解な微孔があるのが、発見されたのだった。それを見て、熊城が点滅器を捻《ひね》ると、その異様な霧が、今度は法水の、病的な探究の雲に変っていった。やがて、彼はニタリとほくそ笑んで、二人を顧《かえり》みた。
「この微孔の存在理由《レーゾン・デートル》は、ある意味では隠れ衣であり、また、一種の水晶凝視《クリスタル・ゲージング》を起すにもあったのだ。それぞれ芯孔に通じているので、そこから導かれてきた蝋の蒸気が、蝋身を伝わって立ち上《のぼ》ってゆく。しかし、そうなって、ダンネベルグ夫人の顔前に蒸気の壁が出来、さらに、中央の三本に焔を瞬《またた》かせて、光を暗くするとだ。当然、円陣の中央《まんなか》にいる一人の顔は、異常のない両端の光から最も遠くなる。したがって、その顔が、ダンネベルグ夫人からは全然見えなくなってしまうのだ。また、同時に両端の二本も、両側から上ってくる蒸気に煽《あお》られて、焔が横倒しになる。そして、光の位置がさらに偏《かたよ》るので、当然両端にいる二人の顔も、この位置から見ると、光に遮られて消えてしまうのだよ。つまり、旗太郎・伸子・セレナ夫人――と、こう数えた三人というのは、仮令《たとえ》中途でこの室から出たにしても、その姿を
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