段階の出没に、一体どう云う犯人の意図が含まれているのだろう?」
「ウン、全くあれには惑殺されるよ」熊城も暗然となって呟いた。「それ迄僕は、てっきり犯人の変装だと信じていたのだが、あれに打衝って、その考えが根底から崩れてしまったよ。護摩の火の光だけなら、恐らく有効だろうがね。あのように、左右へ提灯を吊すとなると、莨の火と同様正体を曝露する惧れがある。と云って、それを屍体だとする事は、より以上現実に遠い話だからね。大体法水君、君の意見は?」
然し法水には、何故か生気があった。
「所がねえ、僕は君達と違って、あの提灯を動かさずに観察して見たんだよ。提灯の中の蝋燭の火だけを凝然と瞶めていたのさ。すると、犯人の不思議な殺人方法が、何んとなく判って来るような気がして来たんだ。今に、天人像の後光と筒提灯との光との間に、一体どう云う不思議な機械が廻転していたものか――それが、屹度判る時期が来るに違いないよ。とにかく、今日は此れだけで打ち切って、僕によく考えさせて呉れ給え」
そうして、事件の第一日は、謎の山積の儘で終ってしまったが、果して熊城は、柳江・喬村・朔郎の三名を拘引したのだった。
三、
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